コンセルトヘボウ主義

世界最高のオーケストラ、コンセルトヘボウのことを中心に、個人的に注目している演奏家や音源について書いていきます。

【コンサート】ラザレフ/日フィル グリンカ、チャイコフスキー、ボロディン 2016/05/08(Sun) @東京芸術劇場

日フィル70周年記念のコンサート

 

グリンカ:オペラ《ルスランとリュドミラ》序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー:バレエ組曲白鳥の湖
ボロディン:オペラ《イーゴリ公》より「だったん人の踊り」
グリンカ:オペラ《皇帝に捧げし命》(イワン・スサーニン)より「栄光/終幕の合唱」

 

将軍様ことラザレフのロシア音楽総決算というべき、超重量級プログラム。
クラシックファンでなくとも、イワン・スサーニン以外は必ず耳にしたことがある曲なはず。

 

冒頭の拍手が鳴り止まないうちから、ラザレフがオケを鼓舞して《ルスランとリュドミラ》が始まったわけだが、このホールの特性なのか、ラザレフの指示なのかは分からないが、演奏が粗い。


特にラザレフがゴリゴリ鳴らす弦が薄く、ティンパニがこれでもかというくらい叩くので、とても耳についた。
2階のLBにいたから尚更か。


チャイコのピアノ協奏曲は若林さんの強靭なタッチはこの曲のイメージにぴったりだったが、ミスタッチも割とあり、第3楽章はオケのバランスが悪い。
以前から思っているのだが、どうもあの外国人のティンパニストは残響考えずに叩きすぎるのである。

 

後半、白鳥の湖からようやくオケに瑞々しさが出てきて、冒頭の美しいメロディから雰囲気満点。
ホルンも久々の日橋さんの甘美な響きにうっとり。詳しいことは分からないが、ラザレフの時は日橋さんが「戻ってくる」ことが多いようだ。
ラザレフは客席を時々見て、会場から笑いを誘う。

 

ラストの2曲、コーラスが入る間、ラザレフは指揮台にずっと立っていた。
客席を見て、コーラス入るまでおしゃべりしててください、とジェスチャーし、またもや笑いが。

最後の2曲はとにかく鳴らしまくる曲なので、ボリュームを抑えないのは賛成だけど、それでもパーカッション、ティンパニ、大太鼓、シンバルが全部耳についた。更にはイワン・スサーニンでの鐘。

 

お祭りのコンサートだし、エンタメ製の強い選曲ではあったので、ある意味楽しめればよしなのであるが、それでもショスタコーヴィチで聴かせたような緻密さが欲しかったといえよう。

次の土日は行けないので、さいたま公演のベルリオーズ幻想交響曲を聴きに行ければ行こうと思う。

 

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【コンサート】上野耕平リサイタル 2016/05/03(Tue) @昭和音大ユリホール

4/19のB→Cに続き、上野さんのコンサートに行ってきたのであった。

<曲目>
J.S.バッハ:G線上のアリア
C.P.E.バッハソナタ
ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より」から第2楽章
ドゥメルスマン:ファンタジー

D.ミヨー/スカラムーシュ
P.モーリス/プロヴァンスの風景 
G.ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー
ほか

どうも5月病が抜けなかったが、演奏会に行ってきた。

コンセプト的には3/18の東京春祭に似ていて、今度発売するセカンドアルバムに収録される曲の一部お披露目を兼ねたといったところであろうか。
B→Cに比べるとコンテンポラリーな要素がかなり少なく、親しみやすい曲が多かったように思う。

個人的にはドゥメルスマンの「ファンタジー」とP.モーリスの「プロヴァンスの情景」の第2,4楽章がかなり好きである。
特に第2楽章はピアノのソロにうっとりするが、上野さんのお話しによると、原曲はハープのソロらしい。是非とも聴いてみたいものである。

次回の上野さんのコンサートは5/22(日)のC.ヤルヴィ/都響
ラフマニノフの「交響的舞曲」でサクソフォンソロを担当らしい。楽しみといえよう。

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【コンサート】ノット/東響 シェーンベルク、ベルク、ブラームス@ミューザ川崎 2016/04/23(Sat)

東京交響楽団
第56回川崎定期演奏会

指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノ:チェン・レイス
バス・バリトン&語り:クレシミル・ストラジャナッツ
混声合唱:東響コーラス


曲目
シェーンベルクワルシャワの生き残り 作品46 ~語り手、男声合唱と管弦楽のための
ベルク:「ルル」組曲
ブラームスドイツ・レクイエム 作品45

今回は群馬で土日とも自転車のレースがあり、2日目だけ出ることにして、1日目このコンサートを聴くことにした。
自転車との兼ね合いは本当に難しいといえよう。

世界中から絶賛されているミューザ川崎は音響的には最高であるが、立地のせいか、客入りはさほどよくない。
今回も空席があって、8割ほどの入りであった。
(それでも、ノット就任公演のマラ9よりは多かったが)
川崎定期の数が減ったのはもったいないが、ある意味仕方ないのかもしれない。

でも、やっぱりミューザで聴いてよかったと思えるのが今回のコンサートである。

ワルシャワの生き残りは、なかなか演奏されない作品であるが、東響コーラスが力強く圧巻。
特にバーンスタインのカディッシュもそうだが、ユダヤ系のテーマを扱う時に出てくる、ヘブライ語の合唱は他にはない、独特な効果をもらたすといえよう。

続く、ベルクの「ルル」組曲はノット/東響がこのホールの響きを生かし、透明感溢れるサウンドも聴かせていた。

後半のドイツ・レクイエムは、意外にもノットが初めて演奏するらしいが、何か噛み締めるように、祈るようにゆったりしたテンポで進め、トータル73分もあった。
第6楽章はテンポがやや速く、多少粗さがあったが、第2楽章、第3楽章の盛り上げ方が素晴らしかったといえよう。

心が洗われたのである。

 

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【コンサート】インキネン/日フィル ブリテン、ホルスト@サントリーホール 2016/04/22(Fri)

日本フィルハーモニー交響楽団
第679回東京定期演奏会

 

指揮:ピエタリ・インキネン
ヴァイオリン:庄司紗矢香
女声合唱:東京音楽大学

 

プログラム
ブリテン:ヴァイオリン協奏曲
ホルスト組曲《惑星》 

 

前半のヴァイオリン協奏曲は第一楽章こそ硬さがあり、もう少しボリュームが欲しいと思っていたものの、第二楽章から庄司紗矢香がノリノリで弾いていた。
楽譜を見ながらの演奏であったが、曲の雰囲気はベルクのヴァイオリン協奏曲を思わせながらも、あそこまで無調ではなく、メロディーが残っているあたりがこの曲のいいところ。


特にカデンツァから終楽章にかけて盛り上がっていき、最後は同じフレーズが何度も繰り返されながら終わっていく。ここにはシンフォニア・ダ・レクイエムにも
通じるような「祈り」が感じられるような気がする。

ちなみにアンコール曲は、スペイン内戦時の軍歌:アヴィレスへの道であったが、表現が凛としており、実に痺れたといえよう。


後半の「惑星」は、冒頭の拍手からほぼ間髪入れて開始される。火星では最強音がやや突き刺さるように聴こえ、弦がスポイルされる場面も。

今回の演奏会で特によかったのは、「金星」の美しい弦の響きと繊細さ、コンマスの千葉清加が全体をリードしながら甘美なソロを奏でていく。
「水星」では軽快さを維持しながらパーカッションが艶やかな音を奏でていく。
木星」は「惑星」の中でベストな演奏だったかもしれない。曲を手中に収めており、堂に入った表現だった。
特に有名な主題では、弦が全面に出て共感度たっぷりに弾いていく。普段クールなインキネンでも熱い演奏だったといえよう。
逆に土星は冒頭で金管が少し不安定になってしまったのが残念。それでも後半は持ち直していく。ここは明日は修正してくるであろう。
続く「天王星」でも、「木星」同様の見通しの良さ。フォルテシモの最後の音が見事に決まるのである。
冥王星」はP席のドアを開けて、ドアを閉めてからも歌われて、文字通り消えるように終わっていたのであった。感銘深い。

トロンボーンに久々の藤原さん、トランペットにはお馴染みのクリストーフォリさん、そしてホルンには都響首席の有馬さん(ソロ美しかった)、ティンパニの2番にはN響の石川さん(やっぱり巧い)と協力な布陣だったことを付け加えておく。

 

終演後、インキネンのアフタートーク。

庄司紗矢香とケルンで同門だったこと、指揮者として2度目の演奏会が庄司紗矢香との共演だったことや、9月のワーグナーの歌手について語ってくれた。
インキネンは本当にワーグナー好きなんだと伝わってきた。
そして、最後に熊本地震の募金箱を持っているので、皆さん寄付よろしくお願いします、と終わり。

 

終演後、インキネンと団員が募金箱持っていたので、わずかながら寄付してきたのであった。

今日はノット/東響を川崎で聴いてから、その足で自転車のレースで群馬へ行くのである。

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【コンサート】B→C 上野耕平 ソロリサイタル@オペラシティ 2016/04/19(Tue)

B→C バッハからコンテンポラリーへ
181 上野耕平(サクソフォン


J.S.バッハ:パルティータ イ短調 BWV1013(原曲:無伴奏フルート・パルティータ) 
C.P.E.バッハソナタ イ短調 Wq132(原曲:無伴奏フルート・ソナタ) 
棚田文紀:ミステリアス・モーニングⅢ(1996) 
リュエフ:アルト・サクソフォン独奏のためのソナタ(1967)
西村 朗:水の影 ─ アルト・サクソフォンのための(2011)
鈴木純明:スフルスティック ─ アルト・サクソフォン独奏のための(2008)
坂東祐大:新作(2015〜16、上野耕平委嘱作品、世界初演

テュドール:クォーター・トーン・ワルツ

 

上野耕平さんのサクソフォンコンサートに行ってきた。
今回は初のソロ・リサイタル。

シモーノ/読響にも行きたくて、体が2つあるならそちらにも行きたかったのである。
最近体が3つ欲しい。コンサート用、ロードレーサー用、エンジニア用。
睡眠時間を差し引いた分から配分を考えなくてはならないのである。

さて、話を公演のことに戻すが、J.S.バッハC.P.E.バッハ以外はコンテンポラリーな曲が多かった。
上野さんはいわゆるクラシックな曲をしみじみと聴かせることにも長けているが、やはり真骨頂は超絶技巧を要求されるコンテンポラリーであると認識している。

個人的には、棚田文紀と坂東祐大の曲、特に後者は圧巻だったといえよう。
#サクソフォンはいいぞ

 

今度の上野さんの演奏会は5/3、昭和音大の新百合ヶ丘である。
※4/23はノットの演奏会のため都合つかず、、、

 

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【コンサート】インキネン/日フィル ヴェルディ レクイエム@みなとみらい 2016/04/16(Sat)

日本フィルハーモニー管弦楽団
第316回横浜定期演奏会<春季>

 

指揮:ピエタリ・インキネン
ソプラノ:大隅智佳子
メゾソプラノ池田香織
テノール:錦織 健
バス:妻屋秀和
合唱:晋友会合唱団

 

この日はノットとのダブルヘッダーであり、昭和風ダッシュでみなとみらいに向かった。
電車が遅れるハプニングもあったが、無事に会場に到着したのであった。

 

インキネンの指揮はティーレマンにかなり似ているが、フォルテの時も大きなアクションはほとんど取らず、汗をかかない指揮者と言われている。
オペラ指揮者だけあって見通しがかなりよく、サウンドも(特にピアニシモが)クリア。繊細な音を出す。
一方、フォルテもしっかり鳴っており、テノールの声量にはやや不満があったが、独唱、合唱ともに総じてよく、特にバスの美声にはしびれた。

課題をあげるとすれば、フォルテの時に弦が負けて、金管が飛び出して聴こえることか。
金管でいけば、ホルンの日橋さんが抜け、トロンボーンの藤原さんも乗り番ではなく、クリストーフォリさんが孤軍奮闘であった。
全体では悪くないものの、各パートに顔となるリード役がいないことと、弦の底上げは必要であろう。
そこはヴァイオリニストでもある、インキネンのトレーナーとしての腕に期待したいといえよう。

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サイン会をやっていたので、タコ5のCDを買ってみたが、これはいいぞ。

 

 

【コンサート】ノット/東響 リゲティ、バーセル、R.シュトラウス@オペラシティ 2016/04/16(Sat)

東京交響楽団
東京オペラシティシリーズ 第91回
指揮:ジョナサン・ノット
神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団

 

リゲティ:アトモスフェール
パーセル:4声のファンタジア ト調 Z.742、二調 Z.739
リゲティ:ロンターノ
パーセル:4声のファンタジア へ調 Z.737、ホ調 Z.741
リゲティ:サンフランシスコ・ポリフォニー
R.シュトラウス交響詩ツァラトゥストラはかく語りき」 作品30

 

久々のノットである。
前回が11月だったので、実に5ヶ月ぶりである。

 

個人的にリゲティは大好きな作曲家なので、どのように調理するか楽しみであった。
リゲティとバーセルという、400年くらい離れた作曲家を交互に並べるプログラムが一見すると不思議な感じがするが、高い結合性を持って聴き手に迫ってくる。
しかも、神戸愉樹美ヴィオラ・ダ・ガンバ合奏団を2階席の左上に配置し、彼女らの演奏になると、ステージを暗くし、スポットが当たるようにしていたのである。
この視聴覚的効果の高さも含め、このプログラムの凄さは実演でないと分からないといえよう。

リゲティと聞いただけで尻込みしてしまう人が多い中で、バーセルを組み合わせることで不思議と両者がかみ合って、抵抗感なく聴ける。
ノットのプログラミングセンスに脱帽である。
これだけでメインプログラムのように質量ともにたっぷりであったが、不思議と時間の長さは感じさせなかったのであった。

 

後半はR.シュトラウスツァラトゥストラ
ノットが得意にしている曲で、当然のように暗譜。以前、BBCプロムスでグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラ相手に振っていた時の演奏がyoutubeに上がっているが、16型でテンポはその時よりも遅め、特に大胆にリダルダントをかけるあたりはノット自身が進化していることを感じさせる。
そして、何より東響のサウンドが変わった。まるでバンベルク響のように重心が低く、首席3人を揃えたホルンは朗々と鳴り、木管が艶やかに鳴り、黒光りするような響きであった。

もともと弦には定評がある東響であるが、小編成が得意で重心が高かった。

それでは今は大編成でも、大排気量でトルクにも余裕があるような高級車といえよう。
ますます楽しみである。

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