8番の興奮も冷めやらぬまま、たった2日の休みを経て、都響はマラ9のリハへ突入。
このプログラムが発表されてから、他の公演を犠牲にしても3日連続で行くことに決めていました。
というのもマーラーの9番がクラシックの中で一番好きな曲だから。
自分がまだ中学の頃、マーラー好きを決定づけたのは9番で、この曲が未だにクラシックの中で頂点に君臨しています。
昔聴けなかったハイドン、ワーグナー、そして現代音楽も楽しめるようになった今でも変わらないこの曲。
まあ、曲自体に関しての思いは別枠で。
初日、3/15(土)、ラザレフ/日フィルの「レニングラード」を聴いた後でマラ9を3連発という、まさに将棋の加藤一二三九段が毎日うな重を食べるかのごとくのスケジュールでしたw
音の分離が良くなく、芸劇はあまり好きではないんですが、1階の前から11列目といういい席を押さえました。
さすがにあれだけの大曲を演奏した後だけあって、主要パートのトップは入れ替わっていました。
前回は矢部さん、四方さんのツートップで、今回は山本さん。
ただ、お二人のうち、どちらかは出てくると思っていたので、実は意外に感じていました。
その理由は次の日に知ることに、、、
この日の演奏はミスもなく完璧なものでしたが、8番で見られたようなテンポの大胆な動かし方は息を潜め、録音向きのような模範的な演奏。
それでもコーダはすごかったですが。
そして、次の日、みなとみらいに行って配られたプログラムで分かったことが、矢部さんが病気で降板という事実でした。
2日目の公演は横浜みなとみらいホール。
個人的はこのホールはどこでも音がよく響くので好きなんですが、場所が都心から遠いのと、このホールの響きを好まない方もいらっしゃるようです。
前週の8番は2日連続とはいきませんでしたが、両方聴いた方の話ではみなとみらいのほうがテンポを大胆に動かしていたそうなので、こっちもそう来るかなと聴いていたら、やっぱり動かしてきました。
ただし、インバル/都響は既に良くも悪くも強い信頼関係で成り立っているため、就任当初のようにインバルが全部細かい指示を出すわけではないため、前日と違うことをやると少なからずキズを生み出します。
この日も第1楽章の最初のクライマックスと第3楽章の金管で比較的大きなキズがありました。
でも、全体的に暖かい音に包まれ、インバルは第4楽章の冒頭で弦に対して、「もっと鳴らしまくれ!!」と全身を使って鼓舞します。
この段階での感想は、CDにするなら初日、実演での感動は2日目。
そして、3日目。
このチクルス最後にして、インバルがプリンシパル・コンダクターとして最後の日。
こういう日ってやけに気合いが入って気負ってしまうものですが、インバルは表情に余裕すら感じられ、オケに細かい指示を出すこともなく、あくまで自然体でした。それでようやくインバルと都響らしさ、そして最高のものを体感出来たと思います。
終わった後の会場の雰囲気も最高でした。あの静かな空間を皆で共有しようとする意思は会場にも伝わってきました。
今日の公演だけ絞って聴いた人は幸運かもしれません。でも、3日間全部チェック出来て、無念の矢部さん降板の中、オケとの信頼関係を構築していく過程が見れたのは幸せでした。
山本さんも急遽の大役、大変だったとは思いますが、最後は呼吸もぴったりでした。カーテンコールでインバルと山本さんが肩を組んで出て行くシーンが強く印象に残っています。マエストロ・インバル/都響のみなさん、本当にありがとうございました。
これが色んな意味で一つの区切りだと思いますが、9番自体が「マーラーが死を受け入れた」としたら、インバルが「天国から自身を回想しているよう」と表現する、7月に公演予定の10番を楽しみにしています。