<演奏>
指揮:アレクサンドル・ラザレフ
ピアノ:若林顕
合唱:晋友会合唱団
ゲスト・コンサートマスター:藤原浜雄
<演目>
【ラザレフが刻むロシアの魂《Season2スクリャービン3》】
リスト:交響詩《プロメテウス》
スクリャービン:交響曲第5番《プロメテウス》
ラヴェル:バレエ音楽《ダフニスとクロエ》第1,2組曲
ボロディン:歌劇《イーゴリ公》より「ダッタン人の踊り」(アンコール)
5月最後の演奏会。もうこんなに楽しい演奏会はない。笑いあり、涙ありの濃密な2時間でした。
前半、リストの「プロメテウス」からしてラザレフ節全開。
日フィル自慢の金管群を全面に出して、力強い響き。
スクリャービンのシリーズのラストを飾る交響曲第5番「プロメテウス」はピアノ、チェレスタ2台、オルガン、合唱付きでアバンギャルドな曲でしたが、それでもラザレフの手にかかると聴きやすい。
後半になると金管を全面に出しながらも、第2組曲へ入る部分の雰囲気に「緻密なる猛将」が発揮されていたように思います。
そこからはテンポを上げて合唱も声量を上げて一気呵成で押し切るあたりがラザレフ風ラヴェル。
晋友会合唱団もこなれたもので、ラザレフの速いながらも丁寧な指揮に応えていく。
あと、毎回面白いのは、演奏中や演奏後に着席を振り返って「ドヤ顔」をキメるところ。これがもうツボで、吹き出しそうになりました。
ラヴェルも終わった瞬間に着席を振り返って「着地」。ファン・サービス満点なんですよね。
これも音楽が素晴らしいから相乗効果を発揮するので、まさに「ラザレフ効果」でしょう。
そして、前日にもあったと聞いていた「ダッタン人の踊り」のアンコール。
これがあまりにも美しすぎて思わずウルッときました。
やっぱり本場のロシアものを聴くと、通っている血がモノを言うんですよね。
演奏終了後が15時40分過ぎ。ここからラザレフのアフタートークがスタート。
ラザレフが巻きで話すので、通訳の小賀さんが同時通訳気味に進行。
後期のショスタコーヴィチのプログラムへの意気込みをショスタコーヴィチの人物についてエピソード付きで語ってくれました。
内容としては、
・ショスタコーヴィチはすごい才能の持ち主だったけど、よく演奏会に来ていたので、さほど遠い存在には感じなかった。1969年にBPhがカラヤンとモスクワ公演に来た時にリハーサルに姿を見せた。BPhの団員はリハそっちのけで写真を撮りまくっていた。
・ショスタコーヴィチは口下手だったけど、負けず嫌い、だけどウソはつけない性格。
仕事仲間とハエ取り紙にくっつくハエの数を競っていた。取ったハエの数で勝ったことで自慢していたが、砂糖を巻いていたことを後から告白。
・オボーリンがピアノコンクールで優勝、ショスタコーヴィチが2位だったことに「あれは何かの間違いだ」と言い続けたものの、オボーリンとの関係は良好
・ショスタコーヴィチはマーラーの流れを引き継ぐものと感じているので、マーラーのように演奏したい。
・みなさんをがっかりさせないように、いい演奏をすることを誓う。
この後、ラザレフ師匠に演奏のお礼を言ってサインと写真を一緒に撮って頂きました。
日フィルのファンを愛する精神と謙虚な姿勢には本当に頭が下がります。
ラザレフとはタイプが違う、ヤマカズ、インキネンなど、有能な指揮者がたくさんいるので、それぞれの個性を吸収しながら演奏にさらに磨きをかけていって欲しいと思っています。
ファンも増えるだろうし、応援したくなります。
あと、あまりこういうことは言いたくないんですが、
今年、ある大好きな指揮者が某楽団の音楽監督に就任したことで、その楽団主催の演奏会に多く通うことに決めたんですが、正直その楽団は指揮者の人気におんぶだっこで、あちこちで驕りが見えるんですよね。
「演奏を聴きに」にお金を払っているんですが、いくら演奏がよくても、その指揮者が素晴らしい人格者であっても、楽団運営側にそういう人がいると、全体のイメージが悪くなってしまうんですよね。
(常に上から目線で出待ちを仕切りたがる、演奏会のアレンジの「苦労話」はやたら話したがる)
それが運営側で気付いてからでは遅いんです。日フィルは危機的な状況も経験しているので、そのあたりは心得てるのかな、と感じました。
(司会をされたVlaの方が「ファンあってこその日フィル」と何度も強調されてました)