コンセルトヘボウ主義

世界最高のオーケストラ、コンセルトヘボウのことを中心に、個人的に注目している演奏家や音源について書いていきます。

【コンサート】インバル/都響 ブリテン、バーンスタイン「カディッシュ」@サントリーホール 2016/03/24(Thu)

東京都交響楽団
第802回 定期演奏会Bシリーズ

指揮/エリアフ・インバル
語り/ジュディス・ピサール、リア・ピサール *
ソプラノ/パヴラ・ヴィコパロヴァー *
合唱/二期会合唱団 *
児童合唱/東京少年少女合唱隊 *


曲目
ブリテンシンフォニア・ダ・レクイエム op.20
バーンスタイン交響曲第3番《カディッシュ》 * (1963)(日本語字幕付き)

個人的に大好きな曲である、シンフォニア・ダ・レクイエムと、初めて聴く「カディッシュ」と組み合わせ。
死と救済を意識した、強烈なプログラムである。

最初のシンフォニア・ダ・レクイエム、冒頭の大太鼓からして強烈な一撃。
でも、決してうるさくならないのがインバルのすごいところ。さらに80歳を迎えるにあたり、あまり激しいアクションを取らなくなった。
それでも、大排気量で高トルクで音楽の深みが増しているのである。
個人的に一番好きな第3楽章は、テンポを落とし、これでもかというほど切実に聞かせる。

後半の「カディッシュ」
ホロコーストの惨劇を描いた作品。ホロコーストの生き残りで、バーンスタインの友人であるピサールが一度はテキスト化を拒んだものの、911を機に描くことを決めた曰くつきの作品。
当初はピサールが出演予定だったが、彼の死去によって、ランベール・ウィルソン出演予定に替わり、さらにピサール版使用権利の問題もあり、ピサール夫人と令嬢が語りを務めることになった。
そんな紆余曲折があったが、インバルはこの作品を完全に手中に収めていて、師バーンスタインの音楽を雄弁に聞かせる。
ヘブライ語の合唱、独唱に、英語の語り。
ホロコーストを機に神を許せなくなったことへの懺悔、そして平和への祈り、とメッセージがあまりにも強烈なため、聴き手にも相当な覚悟が求められる作品であることに違いないが、こういう不安時代であるからこそ聴くべきなのかもしれないといえよう。