コンセルトヘボウ主義

世界最高のオーケストラ、コンセルトヘボウのことを中心に、個人的に注目している演奏家や音源について書いていきます。

【コンサート】ノット/東響 マーラー:交響曲第8番 2014/12/7(Sun)

ミューザ川崎シンフォニーホール
開館10周年記念コンサート

マーラー交響曲第8番「千人の交響曲

指揮:ジョナサン・ノット
ソプラノI:エリン・ウォール
ソプラノII:メラニー・ディーナー
ソプラノIII:アニカ・ゲルハルズ
アルトI:イヴォンヌ・ネーフ
アルトII:ゲルヒルト・ロンベルガー
テノール:ニコライ・シューコフ
バリトン:デトレフ・ロス
バス:リアン・リ
合唱:東響コーラス(合唱指揮:冨平恭平)

児童合唱:東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)

 

もう凄すぎる体験をして唖然としているので、何から書いたらいいか困っています。
今年の中でも群を抜いてベスト演奏言えることは間違いないでしょう。

 

久々のミューザ川崎
4月、ノットが音楽監督として就任した時にマーラーの9番を振って以来。
ミューザ川崎は世界中の指揮者が絶賛するホールですが、物音がホール中に響き渡るくらい残響が多く、9番を2階席で聴いた時は弦は綺麗だけど重心が高く、オケは必死に食らいついているけど、対向配置とノットのキューの多い指揮に戸惑い、スタミナが切れているような印象を受けました。

 

今日は1階席の前から6列目。何とかオケの後ろが見えるくらいのギリギリの席。
でもここが正解でした。

 

今日は海外から錚々たる顔触れの歌手を呼んで、合唱も評判高い東響コーラス。

ノットが登場するや、ほぼ呼吸を置かずに凄まじい『来たれ創造主』の大合唱。
ノットが以前よりも自由な棒さばきで、歌詞を口ずさみながら熱く、そして緻密な音を作っていきます。
驚いたのがその響きの密度の濃さ。
こんなに大合唱、大オーケストラで聴いているのに遠くで鳴り響くのではなく、室内楽のように包み込むように聴こえること。
東響のサウンドも、ノットの手兵バンベルク響のように重心が低く、黒光りするようなサウンド。弦の美しさはそのままに、東響は低弦と大太鼓がしっかりと支え、高トルクで余裕で弾いていました。
4月とは全く別なオケのよう。ノットが求めていた「ドイツ的なダークな響き」が早くも定着しつつあるオケの柔軟さと変化の速度に驚き。ノットがいない間に何が起きたんだというくらい。
最初は金管にややキズがあったものの、うなぎのぼりで調子を上げていきました。プレーヤーが楽しんでいる!

 

そして何といっても、それらを可能にさせたのはノットの卓越した手綱捌きでしょう。
基調はやや速めのテンポながら、ホールの特性を手中に収め、絶妙な強弱と緩急の付け方。
特に天使が降りてくるところと、クライマックスである『全員の合唱』ではテンポを落としてたっぷりと歌わせる、その時にノットが客席側に見せる表情が完全に曲と一体化して涙腺が危うくなる。まさにノット自身が語るようにロマンチストの顔。

演奏が終わった後はしばらく唖然としていましたが、ノットがカーテンコールで呼ばれると地鳴りのようなブラボーの嵐。

こんな経験は何年に一回出来るか分かりません。
今日はなんて表現したらいいか分からないけど、来年のノット/東響にはかなりの期待をせざるを得ません。

本当に最高の体験をありがとう。

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