日本フィル杉並公会堂シリーズ2015 第4回
指揮・ヴァイオリン:ピエタリ・インキネン
ヴァイオリン:扇谷泰朋
<プログラム>
シベリウス:歴史的情景第2番
J.S.バッハ:2挺のヴァイオリンのための協奏曲
チャイコフスキー:交響曲第5番
インキネンの素晴らしさは何と言っても弦、そしてシベリウス!
前回に続く「歴史的情景」シリーズは他の2作品と比較しても群を抜いて素晴らしかった。
交響曲の7番と5番を思わせるような雰囲気に、インキネンの緻密で叙情性のある指揮が光る。この残響が多めのホールにも素晴らしく鳴り響いていた。
次はインキネン弾き語りのバッハのVn協奏曲。
まずはインキネンのVnに対する思い、12年前の初来日時は指揮者としてではなく、Vn奏者として来たことや、Vnの練習をする時間がない中、バッハの協奏曲を扇谷さんや日フィルと演奏すること、次に演奏されるチャイコフスキーの5番を演奏することに対する想いを語ってくれた。
バッハは主に扇谷さんとコンミスの千葉さんがリード。インキネンはほぼソリストとして立ちまわった。王子な風貌のインキネンにVnはよく似合う。
このこじんまりとした曲もこのホールには合っていた。
休憩を挟んで、チャイコフスキーの5番。
冒頭からゆったりとしたテンポで進む。クールに進める傾向があるインキネンにしては熱い演奏。
ただ、どうも弦は鳴っていても、金管が硬直していてバランスが悪い。藤原さんやクリストーフォリさんがいないと、どうも耳についてしまう。ティンパニもこのホールにしては叩きすぎ。特に最強音が耳がうるさく感じてしまう。
よかったのは第2楽章と第3楽章。特に第2楽章は東響の首席、大野さんがソロを吹くだけあって、ここは鳥肌が立った。そして弦や木管が主役の緩徐楽章なので、インキネンの熱くも弦を立てる指揮が曲想にぴったりハマった。
第3楽章も早めのテンポながらもクールにまとめ上げ、いよいよ第4楽章。
でも、ここで第1楽章と同様の問題が。
特にティンパニを強く叩かせるのはインキネンの意図だろうけど、このホールのせいか、やっぱり最強音が暴発気味に聴こえる。
最後の最後はよかったが、全休止から、フィナーレに入る行進の部分がもさもさし過ぎた。
今回、同じ曲目の公演が3会場であったのだが、横浜公演は神奈川県民ホールなのでパス。杉並公会堂を選んだ。
オペラシティを少し小さくした感じで音はよく通るのだけど、逆に言うと大曲になると残響過多になり分が悪いホール。
それがチャイコフスキーの5番では出てしまった。でも、他の2ホールよりは最適な選択だったと信じたい。
アンコールで演奏された、シベリウスのアンダンテ・フェスティーヴォはチャイコフスキーのような甘美なメロディーを感じさせながら、インキネンの弦のコントロール力が光った。癒される演奏だった。
金管の布陣が万全(藤原さん、クリストーフォリさん、そして今は読響の日橋さん)で、ホールがサントリーホールかみなとみらいだったら、もっといい演奏が聴けただろうなぁと思うと、ちょっと歯がゆい思いが残る演奏会だった。
インキネンのVn姿を見られただけでも価値があるけど。