<演目>
J.S.バッハ/ウェーベルン:6声のリチェルカーレ
~ 「音楽の捧げ物」BWV1079より
藤倉 大:5人のソリストとオーケストラのための《Mina》
ハイドン:交響曲 第44番 ホ短調 Hob.Ⅰ-44 「悲しみ」
ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 作品98
<演奏>
指揮:ジョナサン・ノット
フルート:相澤政宏
オーボエ:荒絵理子
クラリネット:エマニュエル・ヌヴー
ファゴット:福井蔵
ハンマーダルシマー:ネイサン・デイヴィス
東京都交響楽団
今日は公開ゲネプロがあったので、友達連れて参加させて頂きました。
ノットのゲネプロを生で見るのは初めてですが、やっぱりユーモアがあって、指示が適切で分かりやすかったです。
(イギリス英語に慣れていないので、聴きとるのはちょっと苦労しましたが)
その中で密度が濃いながらも重要箇所の最終確認だけを効率よくやっていっていました。もう既にオケとの信頼関係が厚いものになってるのが分かりましたね。
先週もそうでしたが、東響のスタッフの方もいい意味で余裕が出てきたように感じます。
友達とお昼を食べて、いよいよ本番へ。
6割ちょっとしか入ってなかった客席が、なんと今日は9割も!
曲目なのか、前回の評判が口コミやネットで伝わったのか分かりませんが、当日券売り場がすごかったらしいです。
というプログラム。
ノットが現代音楽の伝道師としての使命を負っているのを感じ、如何に「現代音楽」に抵抗感なく入れるか、という点でもプログラミングセンスに頭が下がります。
バッハでありながらウェーベルン、そして現代音楽の藤倉大、その後の棒なしで振ったハイドン。ハイドンがあんなに巧い人だとは思いませんでした。
ハイドンはニュアンスにも富みながらも、引き締まった筋肉質な演奏。
そして、圧巻はブラームス。
もう音の情報量、密度からして半端ない超名演。
どのパートもべらぼうに巧く、特に第二楽章のピッツカートの呼吸感、第四楽章の重心の低さと凄み。
これほどまでに短期間でオケの音が化けるとは。
会場からは熱狂的なブラボーの嵐。
終わった後、出待ちをしていたんですが、あまりにも猛スピードでノットが帰って行こうとしたので、隣の人に教えてもらうまで全然気が付きませんでした。
「今すごく急いでますか?」って聞いたら「いやー、かなり疲れちゃて」と、首にはびっしょりの汗が。
でも、いつも通り気さくにサインに応じて下さり、「全部CD持ってるでしょ?w」と聞かれてしまうほど。
「クレイジーなので、もちろん全部持ってますよ♪」
と返事しておきました。
昨日の演奏と比較するのが申し訳ほど、圧倒的に今日のほうが上をゆく演奏でした。
ノットは劇場で下積みをし、猛勉強をした勤勉さと、彼が元来持っている熱いパッションが有機的に作用してる結果だと思います。
たった3ヶ月でこれなら、1年後3年後がいい意味で全く想像がつかないくらい恐ろしい。
ユーモアがあり、知将でありながら、陰でものすごい努力をするノット。
彼から感動と勇気をもらいました。
自分も挫けていられませんね。
特にブラームスは間違いなく今年上半期トップ名演。歴代でも5本から3本に入るでしょう。
放心状態でしばらく会場を後にすることが出来ませんでした。
次は12月。今度はブル3、ワーグナー、マラ8。
今、マラ9をもう一度演奏すれば、あの時より凄い音が出るに違いないでしょう。
オケもそうですが、ノット自身もかなり深化していっているので、次に戻ってくるまでに、さらに高みに達した彼を見るのが楽しみです。