今日も万難を排して

と言いたいところだが、渋滞でグラズノフには間に合わず。
余裕を持って出たつもりだったのだけれど、東名で事故渋滞にはまり、その後も故障車や自然渋滞が重なって池袋到着が大幅に遅れた。
それでもなんとかチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲には間に合い、今日一番のお目当てだった金川真弓さんは無事に聴くことができた。
金川さんのチャイコンは、もっとすっと前へ進んでいくような演奏を勝手に想像していたのだけれど、実際には思っていた以上にテンポを落としてじっくり歌わせるところがあり、少し意外だった。
特に第1楽章の中間あたりなど、ここまで時間を取るんだ、と思う場面もあり、いつもの研ぎ澄まされた印象だけではない、また違った一面を見た気がする。
もちろん音そのものはさすが。芳醇でありながら輪郭がぼやけることはなく、オーケストラが大きく鳴っていても埋もれない。
単純に音量が大きいというより、音の芯がこちらまできちんと届いてくる感じで、こういうところはやっぱり金川さんだなと思う。
そしてアンコールのプロコフィエフ《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》第2楽章が実に素晴らしかった。チャイコフスキー以上に、金川さんの繊細な音色や微妙な色の変化がそのまま生きる曲で、むしろ今日一番強く残ったのはこちらだったかもしれない。
細い線の中にもちゃんと芯があって、そこから少しずつ表情が変化していく。金川さんらしい音の美しさを改めて感じた。最後のピッツカートがアンコールにぴったり。

後半はラフマニノフ《交響的舞曲》。
まず弦が本当に美しく、このホールでここまできれいに鳴るのかと思った。厚みがあるのに濁らず、ラフマニノフらしい暗さや艶がきちんと残っていて、読響の弦の良さがよく出ていたと思う。
そしてヴァルチュハで特に印象に残ったのが、場面ごとの空気の作り方。ハープが入ってくる前の、何とも言えない不気味さ。単に弱くするとか暗い音にするというだけではなく、そこへ向かって少しずつ空気が変わっていき、「何かが起こりそうだ」という気配を作っていく。その不穏さがかなり鮮烈だった。
一方でラストは、そこから一気にテンポを上げて突き進んでいく。その落差、メリハリが実に鮮やかで、ここはやっぱりオペラ指揮者だなと思った。音楽をずっと同じ温度で進めるのではなく、場面ごとに空気を変え、緊張を作り、あるところでは時間をたっぷり使いながら、最後は一気にドライブしていく。そういう場面転換の巧さが、《交響的舞曲》をかなり劇的に聴かせていたと思う。

