指揮:ジョナサン・ノット
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
児童合唱:東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)
女声合唱:東響コーラス(合唱指揮:冨平恭平)
ヤマカズ/日フィルのコンサートが終わり、無事電車で溜池山王へ。
この日のチケット完売。東響ではなかなかないこと。
演奏開始前からマーラーの大曲が始まる前の独特の緊張感が漂い、演奏も期待しないわけにはいかない。
ノットは「作曲家の中で一番マーラーを研究した」というだけあって、もちろん暗譜。
P席には前3列くらいが女性合唱。後ろは空席だった。第5楽章で児童合唱が後ろに配置されていることが分かった。
第1楽章から朗々とした響きで始まる。最初の主題の「ダン、ダン!」もテンポを落とし、明確にバンベルク響の音源との違いが分かった。
中間部もフルートとそれに掛け合うコンマス大谷さんのVnソロが非常に美しい。
音を一つ一つ緻密に奏でていく。バンベルク響の録音は全てスタジオ収録だが、ライヴになると熱い想いがこみ上げてくるのが分かる。
東響の響きは実にエレガント。持ち前の弦の美しさと金管がいい意味で渋く、重心の低い音が加わり、大げさかもしれないが、コンセルトヘボウの響きにかなり近くなってきた。
ノットがこの公演直前に2026年まで契約を延長したので、これがあと11年となると、どんな響きになるのだろう。たった1年半でこれだけ変わるのだから、このオケのポテンシャルは計り知れない。
第2楽章も美しさの極み。
第3楽章になって、藤村さん登場。凛とした表情。
この演奏で敢えて注文をつけるとすればこの楽章だろう。ややトランペットとポストホルンが不安定。前者は第1楽章からそういうところがあったし、特に後者はソロの聴かせどころだけにハラハラした。
第4楽章になると藤村さんが凄い威厳でスッと立ち上がる。まさにフリッカのようだ。
もうこの曲、そして舞台を百戦錬磨でこなしてきた風格がそこにある。
声が本当によく通る。神秘的だ。
第5楽章はアタッカで舞台後方にいた児童合唱が入る。
ここで初めて舞台合唱に気付かされたのだが、少しだけ入りが遅れた。
でも、コーラスは綺麗だし、東響コーラスもさすが。
極めつけは第6楽章。ここもアタッカで入ったが、ノットがマーラーに乗り移り、アルマに愛を語るような慈愛と共感に満ち溢れた圧巻のフィナーレだった。涙なしでは聴けない。
ただ、最後、途中アクシデントもなくじっと聴いていた聴衆だったのに、数人がフライング拍手をしてしまったのは極めて残念だった。なぜ途中まであれほど集中して聴いていたのに、最後の最後で余韻を楽しめないのか、自分は何分でも待っていられたくらい、この演奏に吸い込まれたし、手元の時計では100分は超えていたと思うが、気付いたら終わっていたという感じである。
終演後、ノットの出待ちをしていたら、いつもの倍以上の人数。
藤村さんは「凄いのはジョナサンですから」と言ってサインに応じ、ノットがサインするところまで空けるサービス精神ぶり。恐れいった。
ノットが登場した後はなかなか列が捌けなかった。
さすがに勘弁してくれといった感じだったが。実際、翌日には現れなかったらしい。
終演後、このブログをご覧頂いているという方と長時間情報交換ができた。
こういう繋がりは非常に面白いし、ブログを書くモチベーションにも繋がる。
次のコンサートはナッセン/都響の予定なので、2週間弱ほどお休み。
今回の演奏はバッティストーニと並んで、今年のベスト演奏の予感がする。